小説
第五章 『7月7日(月)』 放課後になった。勝負のときは確実に近づいている。一旦、部室で待ち合わせ、最後の打ち合わせを済ませることにした。 開始予定時刻まであと20分ほどだ。美月は詰将棋の本を読み、泉西先生は瞑想(?)をしている。 美月は普段…
第四章 『7月4日(金)』 朝起きて、台所に顔を出す。 しかし、いつもなら食卓で新聞を広げている父の姿がない。昨日は母がいなくて、今日は父がいない。何だか、ちぐはぐな感じだ。 「あれ? 父は?」 「もう出かけたわよ」振り返った母親の手には、洗い…
第三章 『7月3日(木)』 眼の下のくまが如実に物語るように、睡魔との戦いに図らずも善戦してしまった夜が明けた。 今日は、1時間目に石井英美先生の英語、3時間目に丹治延登先生の数学がある。いつもより、深く術に掛かってしまいそうだ。場合によって…
第二章 『7月2日(水)』 心臓が痛い。 といっても、別に悪い病気にかかったとか、昨日の寿司ネタが傷んでいたとか、古い雑誌やマンガの魔力で夜を無為に過ごしてしまったとか、そういうことではない。極度の緊張が原因だ。 恐るべきことに、大矢高校では…
***** ちいさなもりのまんなかに おおきなきがありましたひとやおはなやどうぶつが もりにやってくるまえから きは みまもった いつまでも みまもったちかづくことなく はなれることなく きにはおおきなえだがあり おおきなはっぱもありましたあついな…
***** 明日の答えなら 今日のどこかにしかない。 ***** 第五章 『金曜日』 翌日の放課後。仮入部の最終日。僕は賑わう音楽室でなく、寂れた将棋部の教室の椅子に一人ぽつんと腰掛けていた。 (これで……いいんだよな) 丸一日考えて出した結論だっ…
***** 負ければ悔しくて、もう一局。 勝てればうれしくて、もう一局。 それがこのゲームの怖くて素晴らしいところ。 ***** 第四章 『木曜日』 翌朝のホームルーム前、福路くんが1組を尋ねてきた。 「昨日は本当に助かったよ。あの後、『字間違え…
***** 一日は短い 悩むにはもったいないから今日もベストの自分をイメージして走ろう! ***** 第三章 『水曜日』 翌朝、僕は始業前に2組の琴羽野さんを訪ねた。なんだか気恥ずかしいので、昨日と同じ別館の廊下にばらばらに移動してから、話を始…
***** 白髪混じりの頭に汗を浮かべ、後退した額には深いシワ、苦しそうな表情を浮かべる初老のおじさん。 その人が、僕のヒーローだった。 ***** 第二章 『火曜日』 「瀬田! 昨日はありがとな」 翌日、登校してきた勝田くんの笑顔を見て僕は肩の…
***** 風に 花の匂いが混じる頃 あなたとの物語ははじまった ***** 第一章 『月曜日』 寒い冬を越えてやっと咲いた桜が、早くも散り始める4月上旬。 季節は春、springである。springには〈跳躍〉といった意味もある。春は跳躍の季節。なるほど、…
おつかれさまです、総村です。今日は小説『将棋部シリーズ』についてです。 当ブログの開設動機は第1回の記事にある通りなのですが、それ自体(自曲紹介、コード譜公開)は何とかかたちにすることができました。逆に言うと、曲紹介というコンテンツについて…